高度人材外国人雇用の注意点
少子高齢化による労働力人口の減少が深刻化する日本において、企業の持続的な成長を支える鍵は、多様な人材の確保にあります。中でも、イノベーション創出の原動力として、今、世界中の国々が獲得競争を繰り広げているのが、高度な専門知識や技術を持つ「高度人材外国人」です。
彼らを自社に迎え入れることは、企業のグローバル化を加速させ、競争力を飛躍的に向上させる絶好の機会となり得ます。しかし、その採用プロセスは、日本人採用とは全く異なる次元の専門知識、とりわけ日本の出入国管理制度、すなわち「就労ビザ」に対する深く正確な理解を前提とします。
「書類を揃えて申請すれば許可される」という単純な手続きでは決してありません。一つの誤解や手続きの漏れが、内定取消という最悪の事態を招き、企業の採用計画を頓挫させるだけでなく、採用候補者である外国人の人生設計をも狂わせてしまう可能性があります。さらに、知らず知らずのうちに法律違反を犯し、企業が「不法就労助長罪」という重い罰則の対象となるリスクも常に存在します。
本稿の目的は、単なるビザ要件の解説に留まりません。ビザ専門の行政書士として長年培ってきた知見に基づき、採用面接の段階からビザ取得後の労務管理に至るまで、各フェーズで企業が直面する課題と、それらを乗り越えるための具体的な「注意点」を網羅的かつ実践的に解説することです。
この記事を最後までお読みいただくことで、採用担当者様は、自信を持って高度人材の採用プロセスを主導し、法務リスクを徹底的に管理し、採用した人材の定着と活躍を最大化するための羅針盤を手にすることができるでしょう。
1:採用戦略の根幹をなす「高度専門職ビザ」の完全理解
高度人材の雇用を検討する上で、その法的基盤となる在留資格「高度専門職」を正確に理解することが、全ての戦略の出発点となります。
1-1. 「高度専門職ビザ」とは何か?
一般的に「高度専門職ビザ」と呼ばれていますが、これは通称であり、法的には在留資格「高度専門職」を指します。この在留資格の最大の特徴は、**「高度人材ポイント制」**という客観的な評価基準を用いている点にあります。
これは、外国人材の能力を「学歴」「職歴」「年収」「年齢」「研究実績」「保有資格」などの項目ごとにポイント化し、その合計点が70点以上に達した場合に認定される制度です。いわば、国が「我が国の産業と経済に貢献する優秀な人材である」とお墨付きを与えた人材にのみ付与される、エリート向けの在留資格と言えます。
1-2. 高度専門職1号と2号:キャリアパスを見据えた違い
高度専門職には、2段階のステップが用意されています。
- 高度専門職1号: 最初に認定される資格です。在留期間は、他の就労ビザが初回1年であることが多い中、**一律で法律上の最長期間である「5年」**が付与されます。これにより、本人も企業も腰を据えた長期的なキャリアプランを描くことが可能になります。
- 高度専門職2号: 「高度専門職1号」として3年以上、適法に活動を継続した人が移行できる、さらに上位の資格です。最大のメリットは、在留期間が**「無期限」**となる点です。これにより、ビザ更新の不安から解放され、日本での生活基盤を永続的なものにできます。さらに、活動内容の制限がほぼ撤廃され、専門分野以外の事業経営なども含め、ほぼ全ての就労活動が自由に行えるようになります。永住権に極めて近い、非常に安定した地位が保障されます。
1-3. 3つの活動類型:採用したい人材はどれに該当するか?
高度専門職1号の活動は、専門分野に応じて以下の3つのカテゴリーに分類されます。採用したい人材がどの類型に該当するかを正確に把握することが、申請準備の第一歩です。
- 高度学術研究活動(高度専門職1号イ): 対象者: 大学教授、公的·民間研究機関の研究者、研究指導者など。 活動内容: 日本の公私の機関との契約に基づき、研究、研究指導、または教育を行う活動。
- 高度専門·技術活動(高度専門職1号ロ): 対象者: ITエンジニア、新技術の開発者、データサイエンティスト、国際法務担当者、マーケティングスペシャリスト、デザイナー、語学教師など、自然科学または人文科学の分野における専門職全般。 活動内容: 日本の公私の機関との契約に基づき、専門的な知識または技術を要する業務に従事する活動。民間企業が雇用する高度人材の大多数がこの類型に該当します。
- 高度経営·管理活動(高度専門職1号ハ): 対象者: 企業の経営者、役員、事業部長、支社長、管理者など。 活動内容: 日本の公私の機関において、事業の経営または管理に従事する活動。
1-4. なぜ「高度専門職ビザ」は選ばれるのか?他の就労ビザを凌駕する優遇措置
高度専門職ビザが他の一般的な就労ビザ(例:「技術·人文知識·国際業務」)と比較して、いかに魅力的であるか、その具体的な優遇措置を見ていきましょう。これらは、採用活動における強力なアピールポイントとなります。
- ① 複合的な在留活動の許容: 通常の就労ビザでは、許可された在留資格の範囲内の活動しか行えません。例えば、「技術·人文知識·国際業務」ビザを持つエンジニアが、自らの技術を活かして会社を設立·経営する場合、別途「経営·管理」ビザへの変更が必要となり、手続きも複雑です。 しかし、高度専門職であれば、本来の専門活動を行いながら、それに関連する事業を自ら経営することが、資格変更なしで可能になります。これにより、キャリアの可能性が大きく広がります。
- ② 永住許可要件の大幅な緩和: これは高度人材にとって最大のメリットの一つです。永住権を取得するには、原則として「引き続き10年以上」の日本在住が必要ですが、この要件が劇的に短縮されます。
- ポイント70点以上の場合: 3年間の在留で永住申請が可能。
- ポイント80点以上の場合: わずか1年間の在留で永住申請が可能。 早期に安定した法的地位を得られることは、日本に生活基盤を築きたいと考える優秀な人材にとって、計り知れない魅力です。
- ③ 配偶者の就労要件の緩和: 通常、配偶者が「家族滞在」ビザで働く場合、週28時間以内という厳しい時間制限があります。しかし、高度人材の配偶者は、学歴や職歴の要件を満たさない場合でも、フルタイムでの就労(「技術·人文知識·国際業務」などに該当する専門職)が可能になります。これにより、世帯収入の安定と、配偶者自身のキャリア形成が実現しやすくなります。
- ④ 一定条件下での親の帯同許可: 就労ビザで滞在する外国人の親が来日し同居することは、原則として認められていません。しかし、高度人材の場合は、**「7歳未満の子の養育」または「妊娠中の本人の介助」**といった目的で、世帯年収が800万円以上あるなどの一定の条件を満たせば、親の帯同が特別に許可されます。これは、特に家族の絆を重視する文化圏の人材にとって、日本で働く上での大きな安心材料となります。
- ⑤ 一定条件下での家事使用人の帯同許可: 世帯年収1,000万円以上などの条件を満たす場合、本国から家事使用人(メイドなど)を1名呼び寄せ、雇用することが認められます。
- ⑥ 入国·在留手続きの優先処理: ビザ申請は通常1ヶ月~3ヶ月程度の審査期間を要しますが、高度人材の申請は優先的に処理されます。在留資格認定証明書交付申請(海外からの呼び寄せ)は約10日、在留資格変更·更新申請は約5日が処理の目安とされており、採用計画を迅速に進めることができます。
2:高度専門職ビザ取得のための具体的要件
高度専門職ビザを取得するためには、大きく分けて3つの要件をクリアする必要があります。
2-1. 要件①:ポイント計算で70点以上を獲得すること
これが最も特徴的かつ重要な要件です。ポイントは「学歴」「職歴」「年収」「年齢」を基本の柱とし、さらに特定の条件を満たすことでボーナスポイントが加算されます。
- 主なポイント項目例(高度専門·技術活動の場合)
- 学歴: 博士号(30点)、修士号(20点)、大学卒業(10点)
- 職歴: 10年以上の実務経験(20点)、7年以上(15点)、5年以上(10点)
- 年収: 30歳未満で年収400万円以上(10点)~年収1,000万円以上(40点)など、年齢と年収に応じて細かく設定
- 年齢: 29歳以下(15点)、34歳以下(10点)、39歳以下(5点)
- ボーナスポイント例: トップレベル大学卒業(10点)、日本語能力試験N1取得(15点)、日本の国家資格保有(5点~10点)、成長分野(IT等)の先端プロジェクトに従事(10点)など
これらのポイントを客観的な資料(卒業証明書、在職証明書、課税証明書、合格証など)で一つひとつ証明し、合計で70点以上であることを立証する必要があります。
2-2. 要件②:ベースとなる就労ビザの要件を満たしていること
高度専門職ビザは、単独で存在する資格ではなく、既存の就労ビザの上乗せ資格という側面を持ちます。例えば、「高度専門職1号ロ」を申請する場合、その前提として「技術·人文知識·国際業務」などの在留資格の要件(学歴と職務内容の関連性など)を満たしている必要があります。ポイントが70点以上でも、このベースとなる要件を満たしていなければ許可されません。
2-3. 要件③:素行が善良であること
これは全てのビザに共通する要件ですが、特に優遇措置の大きい高度専門職では厳しく見られます。日本の法律を遵守していること、納税や年金などの公的義務をきちんと履行していることが求められます。過去の交通違反や税金の滞納などが審査に影響する場合があります。
3:【パターン別】高度専門職ビザの申請フロー
採用する人材が海外にいるか、日本国内にいるかによって、手続きの流れは大きく異なります。
3-1. パターン1:海外在住の外国人を新規に呼び寄せる場合
この場合、**「在留資格認定証明書交付申請」**という手続きを、日本の出入国在留管理局に対して行います。
- ステップ①:内定·雇用契約の締結 採用を決定し、ビザ取得を条件とする雇用契約を締結します。
- ステップ②:必要書類の準備(約1ヶ月) 申請書、ポイント計算書とその立証資料(学歴·職歴·年収を証明する書類)、企業の登記事項証明書や決算書などを準備します。海外から取り寄せる書類もあるため、時間に余裕を持つことが重要です。
- ステップ③:日本の入管へ申請(企業が代理) 原則として、受け入れ企業が代理人となり、管轄の出入国在留管理局に申請します。
- ステップ④:審査(約10日~1ヶ月) 高度人材の申請は優先処理されますが、事案によっては1ヶ月程度かかることもあります。
- ステップ⑤:在留資格認定証明書(COE)の交付 許可されると、紙の証明書が交付されます。
- ステップ⑥:COEを本人へ郵送 交付されたCOEの原本を、国際郵便などで海外にいる本人へ送付します。
- ステップ⑦:現地の日本大使館·領事館でビザ(査証)申請 本人がCOEとパスポートを持参し、自国の日本大使館等でビザ(査証)を申請します。
- ステップ⑧:来日·在留カードの交付 ビザが発給されたパスポートを持って来日し、空港の上陸審査で在留カードを受け取ります。この時点から正式に就労が可能となります。
全体の所要期間の目安:約2ヶ月~4ヶ月
3-2. パターン2:日本在住の外国人(留学生・転職者)を採用する場合
この場合、本人が現在の在留資格(留学、技術·人文知識·国際業務など)から「高度専門職」へ切り替える**「在留資格変更許可申請」**を行います。
- ステップ①:内定·雇用契約の締結 採用を決定し、雇用契約を締結します。
- ステップ②:必要書類の準備(約2~3週間) パターン1とほぼ同様の書類を準備します。国内で揃う書類が多いため、準備期間は比較的短くなります。
- ステップ③:日本の入管へ申請(原則、本人が申請) 原則として、外国人本人が自身の住居地を管轄する出入国在留管理局に申請します。
- ステップ④:審査(約5日~1ヶ月) こちらも優先処理の対象ですが、審査期間には幅があります。
- ステップ⑤:結果の通知 許可されると、入管からハガキで通知が届きます。
- ステップ⑥:新しい在留カードの受領 本人が通知ハガキ、パスポート、現在使用中の在留カード、手数料(4,000円)を持参して入管に行き、その場で新しい在留カード(資格が「高度専門職」になっているもの)を受け取ります。この時点から、高度専門職としての活動が可能となります。
全体の所要期間の目安:約1ヶ月~2ヶ月
4:【採用担当者必読】ビザ申請の成否を分ける「採用段階」での最重要チェックポイント
ビザ申請の成否は、申請書類を作成する段階で決まるのではありません。その8割は、採用面接の段階で既に決まっていると言っても過言ではありません。採用担当者は、候補者の業務スキルや人柄を見極めると同時に、「入国管理局の審査官」の視点を持って、ビザ取得の可能性を厳しくスクリーニングすることが、最も効果的なリスク管理策となります。
4-1. 候補者の適格性を見抜くスクリーニング術
- ① 在留カードの原本確認と「失効照会」の徹底
国内在住の外国人を面接する場合、必ず在留カードの原本を提示してもらい、その場で以下の5点を精査します。コピーの提出だけで済ませては絶対にいけません。- 有効性の検証: 出入国在留管理庁のウェブサイト**「在留カード等番号失効情報照会」**にカード番号を入力し、偽造や失効したカードでないかをその場で確認します。これは企業の法的義務です。
- 在留資格の種類: 現在保有する在留資格が何かを確認します。「技術·人文知識·国際業務」なのか、「留学」なのか、それとも「家族滞在」なのか。これにより、次に取るべき手続き(更新、変更など)が決まります。
- 在留期間(満了日): 満了日が迫っている場合、採用スケジュールに大きな影響を及ぼします。更新申請中か、その見込みはどうかを具体的に確認することが不可欠です。
- 就労制限の有無: 「就労不可」と記載されている場合や、「指定書により指定された就労活動のみ可」と記載されている場合は、原則として雇用できません。
- 資格外活動許可の有無: 留学生や家族滞在者を採用候補とする場合、カード裏面の**「資格外活動許可欄」**に許可のスタンプがあるかを確認します。「許可」とあれば、原則週28時間以内の就労が可能です。
- ② 学歴·職歴の深掘りと「整合性」の確認
履歴書の情報は、自己申告に過ぎません。その裏付けを徹底的に確認する必要があります。- 学歴: 「卒業証明書」だけでなく、**必ず「成績証明書」**の提出を求めます。どの科目を履修し、どのような単位を取得したかは、これから任せる業務との専門的な関連性を証明する上で、最も客観的で強力な証拠となります。
- 職歴: 「在職証明書」で、履歴書に記載された期間、役職、業務内容に相違がないかを確認します。特に注意すべきは、**過去に本人が別のビザ申請で入国管理局に提出した書類との「整合性」**です。わずかな矛盾(例えば、過去の申請ではA社に3年勤務と記載したが、今回の履歴書では4年になっているなど)が発覚した場合、経歴詐称を疑われ、信頼性を失い、不許可となる致命的な原因になります。
- ③ 留学生採用における特有のリスク:「オーバーワーク」
留学生のアルバイトは、法律で原則週28時間以内(長期休暇中は1日8時間以内)と厳しく定められています。この時間を超えて働いていた「オーバーワーク」は、不許可の最も多い原因の一つです。「学業」という本来の在留目的を逸脱し、在留状況が不良であると判断されるためです。
面接時には、過去のアルバイト歴を正直に申告してもらい、もしオーバーワークの事実がある場合は、その理由や期間を詳細にヒアリングし、申請時に反省文を添えるなどの対策が必要になる場合があります。
4-2. ビザ取得を前提とした「職務内容」の設計
採用ポジションの職務内容は、入国管理局の審査官が理解できるよう、専門的かつ具体的に記述する必要があります。誰が読んでも「単純労働」と誤解される可能性のある表現は徹底的に排除します。
- NG例: 「店舗スタッフ」「工場作業員」「データ入力係」
- OK例: 「インバウンド顧客層を対象とした販売戦略の立案及びマーケティング業務」「製造ラインの品質管理及び工程改善業務」「経営分析のためのデータベース構築及びデータ解析業務」
このように、担当業務の中に含まれる専門性、分析的側面、企画·立案的要素を具体的に言語化することが、許可を得るための重要なポイントです。
4-3. 企業を守る法的安全策:「停止条件付採用契約」の活用
採用内定が決まったら、必ず「停止条件」を明記した雇用契約書または内定通知書を締結します。これは、「本契約は、就労可能な在留資格の取得を停止条件とし、当該在留資格が許可された時点をもって効力を生じる」という趣旨の条項です。
万が一、ビザが不許可となった場合に、企業側が雇用義務を負う法的なリスクを完全に回避するための、極めて重要な安全策です。この条項がないと、ビザが不許可になっても雇用契約自体は有効と解釈され、トラブルに発展する可能性があります。
5:申請実務における主な不許可要因と戦略的対策
準備を万全にしたつもりでも、就労ビザ申請が不許可となるケースは後を絶ちません。ここでは、不許可に直結する典型的な要因を分析し、それらを回避するための戦略的な対策を解説します。
- 不許可要因①:業務内容の不適合(「単純労働」との認定)
対策: 申請書類の一部である「理由書」において、なぜその業務に専門的な知識が必要なのかを、誰が読んでも納得できるよう論理的に説明します。例えば、飲食店のホールスタッフでも、「多言語対応によるインバウンド顧客へのメニュー提案、食文化の解説、及び顧客満足度向上のためのデータ分析業務」といった形で、専門性を具体的にアピールします。 - 不許可要因②:学歴·職歴と業務内容の関連性不足
対策: 大学での専攻と業務内容が少し離れている場合でも、成績証明書を精査し、関連性の高い科目を具体的にピックアップして説明します。「〇〇学の授業で学んだ統計分析の手法は、本件業務である市場データ分析に直接的に活用できる」といった形で、具体的な繋がりを明示します。 - 不許可要因③:報酬額の不十分
対策: 報酬額は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」であることが法律上の絶対要件です。実務上、月額報酬20万円が最低ラインの目安とされています。これを下回る場合、生活の安定性に疑義が生じ、不許可のリスクが著しく高まります。同業他社の同職種の給与水準を示す資料を添付するなど、報酬の妥当性を客観的に示すことも有効です。 - 不許可要因④:受入れ企業の事業の安定性·継続性の欠如
対策: 審査では、外国人本人だけでなく、受け入れる企業も厳しく審査されます。特に、設立間もない企業や、決算が赤字の企業は、「本当にこの外国人を安定的に雇用し続けることができるのか?」という点が最大の焦点となります。この懸念を払拭するため、説得力のある**「事業計画書」**を提出することが不可欠です。具体的な収益見込み、資金繰り計画、そして「なぜこの外国人の能力が事業の成長に不可欠なのか」を熱意をもって説明する必要があります。 - 不許可要因⑤:過去の在留状況の不良
対策: 留学生時代のオーバーワーク、税金や年金·健康保険料の未納、転居後の住所変更届の遅延など、過去の日本での素行は全て審査対象です。これらの事実に心当たりがある場合は、隠さずに正直に申告し、なぜそうなってしまったのかの理由説明と反省の意を示す文書を添付することで、審査官の心証を改善する努力が求められます。
6:ビザ取得はスタートライン。採用後の労務管理とコンプライアンス
在留資格の取得はゴールではなく、企業と外国人材が共に日本の法律を遵守し、安定した関係を築いていくためのスタートラインです。採用後の適切な管理を怠ると、在留資格の更新が不許可になったり、企業が罰則を受けたりするリスクがあります。
6-1. 転職·退職時に発生する法的義務と手続き
- 所属機関に関する届出:
雇用していた外国人が退職した場合、または新たに転職者を受け入れた場合、企業(または本人)は、その事実が発生した日から14日以内に、出入国在留管理局へオンライン等で届出を行う法的義務があります。これを怠ると罰金の対象となる場合があります。 - 就労資格証明書の取得(転職者採用時の強く推奨):
転職者を採用する場合、その人が持つ在留資格で、新しい会社の業務に従事することが認められるかを事前に審査してもらう任意の手続きが「就労資格証明書」の交付申請です。これを取得しておくことで、次回の在留期間更新時に「新しい仕事はビザの範囲外だった」として突然不許可になる最悪の事態をほぼ100%防ぐことができます。企業にとっても本人にとっても、極めて有効なリスクヘッジです。
6-2. 企業が負う最も重いリスク:「不法就労助長罪」
企業には、外国人を雇用する際に在留カードを確認し、就労が許可されているかを確認する義務があります。この確認を怠り、オーバーステイの人や就労資格のない人を雇用した場合、企業側(経営者や採用担当者)が**「不法就労助長罪」に問われ、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」**という極めて重い刑罰が科される可能性があります。「知らなかった」という言い訳は一切通用しません。
6-3. 在留資格が取り消される「3ヶ月ルール」
正当な理由なく、許可された活動(就労など)を3ヶ月以上行っていない場合、在留資格が取り消される可能性があります。例えば、会社を自己都合で退職した後、再就職活動を全くせずに日本に滞在し続けるケースなどが該当します。企業側も、退職した外国人に対して、速やかに出国の準備をするか、真摯に転職活動を行う必要があることを伝える責務があります。
7.まとめ
高度人材外国人の雇用は、適切に進めれば、企業の成長に計り知れないほどの価値をもたらします。しかし、そのプロセスは専門的な知識と細心の注意を要する法務手続きの連続です。
本稿で解説した注意点は、いずれも実際の現場で頻繁に起こる問題ばかりです。これらのポイントを一つひとつ確実にクリアしていくことが、採用を成功に導き、企業と外国人材双方の明るい未来を築くための唯一の道です。
特に、初めて外国人を雇用する企業や、過去に不許可歴があるなど複雑な事情を抱える場合は、自己判断で進めるリスクは計り知れません。早期の段階で、ビザ専門の行政書士に相談することが、結果的に時間とコストを節約し、最も確実な成功への近道となります。
8.当事務所のサポート
当事務所では、高度専門職ビザを含む就労ビザ全般に関する豊富な経験と専門知識を持つ行政書士が、お客様一社一社の状況に合わせた最適な提案をいたします。
- 採用候補者のビザ取得可能性の無料診断
- 高度人材ポイント計算と加点戦略の立案
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高度人材の雇用に関するあらゆる不安やお困りごとがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。



