特定活動VISAの解説
目次
はじめに
アイ・ビー飛鳥行政書士法人です。
外国人材の雇用や、外国人自身の日本でのキャリアを考える上で、「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」といった在留資格はよく知られています。しかし、それらと同じくらい、あるいはそれ以上に実務で頻繁に遭遇するのが、非常に複雑で多岐にわたる「特定活動」という在留資格です。
「特定活動ビザを持つ外国人を採用したいが、何を許可されているのか分からない」
「留学生が卒業後も就職活動を続けたいと言っているが、どうすればいいのか」
「ワーキング・ホリデーで来日した若者をアルバイトで雇うことはできるのか」
「特定活動」は、他のどの在留資格にも当てはまらない活動の受け皿として機能するため、その種類は49にも及び、それぞれに異なるルールが存在します。この制度への理解不足は、不法就労助長罪といった重大なコンプライアンス違反に直結するリスクをはらんでいます。
この記事では、ビザ専門の行政書士として、「特定活動」という複雑な在留資格の全貌を解き明かします。その成り立ちから、告示されている全活動のリスト、そしてその中でも特に重要な活動内容、外国人材を雇用する上で最も重要な「就労の可否」を見分ける方法まで、網羅的かつ具体的に解説します。
「特定活動」ビザの基礎知識
まず、この複雑な在留資格を理解するための土台となる基本的な知識から整理しましょう。
なぜ「特定活動」という在留資格が存在するのか?
日本の在留資格は、全部で29種類あり、それぞれに従事できる活動内容が厳格に定められています。しかし、社会や経済の国際化が進むにつれ、既存のどのカテゴリーにも当てはまらない新しい活動や、人道的な配慮から一時的な滞在を認めるべきケースが増えてきました。
新しい在留資格を一つ作るためには、法律(出入国管理及び難民認定法)の改正が必要となり、非常に時間がかかります。そこで、法改正を経ずに、法務大臣が個々の外国人に対して活動内容を指定し、在留を許可する「受け皿」として設けられたのが「特定活動」です。
つまり、「特定活動」とは、他の28種類の在留資格のいずれにも分類できない活動について、法務大臣が特別に指定する活動を行うための在留資格なのです。
最重要原則:名称だけでは何も分からない
「特定活動」という在留資格名だけでは、その外国人が**「何をしていいのか」「就労できるのか」は一切分かりません**。許可される活動内容は、一人ひとりの状況に応じて個別に指定されます。そのため、この在รร資格を持つ外国人を雇用する際は、後述する「指定書」の内容を必ず確認することが絶対的な義務となります。
「特定活動」の3つの分類
特定活動は、その根拠によって大きく3つの種類に分類されます。
- ① 法定特定活動(出入国管理及び難民認定法に規定されている活動)
- ② 告示特定活動(法務省の告示であらかじめ定められている活動)
- ③ 告示外特定活動(告示にもなく、個別の事情に応じて認められる活動)
法定特定活動
これは、出入国管理及び難民認定法(入管法)の本文で直接規定されている活動で、以下の3つが該当します。
- 特定研究活動:指定された機関で特定の研究やその指導を行う活動。
- 特定情報処理活動:指定された機関で情報処理関連の業務に従事する活動。
- 上記2つの活動を行う者の家族の活動。
これらは高度な専門人材に関するもので、一般的な企業が接する機会は少ないかもしれません。
告示特定活動
実務上、最も種類が多く、頻繁に関わるのがこのカテゴリーです。法務大臣が、あらかじめ「このような活動を特定活動として認めます」と官報で告示(広く一般に知らせること)しているもので、現在49種類が定められています。
これらは「特定活動〇号」や「告示〇号」といった番号で呼ばれます。ワーキング・ホリデーやインターンシップ、そして近年注目されている「特定活動46号」などがこれに含まれます。告示特定活動は、社会情勢に応じて追加されたり、削除されたりする流動的なものであることが特徴です。
告示外特定活動
法定特定活動にも、告示特定活動にも当てはまらないものの、人道的な配慮や個別の特殊な事情を鑑みて、慣例的に認められている活動です。
このカテゴリーは、海外から直接呼び寄せる(在留資格認定証明書を取得する)ことはできず、既に日本にいる人が別の在留資格から変更する形で許可されるのが一般的です。
【告示外特定活動の主な例】
- 留学生の就職活動継続:大学等を卒業後も、就職活動を続けるための滞在。
- 出国準備期間:在留資格の更新が不許可になった場合などに、帰国の準備をするための30日程度の滞在。
- 人道上の配慮:高齢の親の扶養や、母国の政変等で帰国が困難な場合(例:ミャンマー人への緊急避難措置など)の滞在。
【網羅版】告示特定活動 全49種類 一覧
現在定められている告示特定活動を一覧でご紹介します。
| 号番号 | 活動内容の概要 |
|---|---|
| 1号 | 外交官等の家事使用人 |
| 2号 | 高度専門職・経営者等の家事使用人 |
| 3号 | 台湾日本関係協会の在日事務所職員及びその家族 |
| 4号 | 駐日パレスチナ総代表部の職員及びその家族 |
| 5号 | ワーキング・ホリデー |
| 6号 | アマチュアスポーツ選手 |
| 7号 | アマチュアスポーツ選手の家族 |
| 8号 | 外国弁護士(国際仲裁代理) |
| 9号 | インターンシップ(報酬あり) |
| 10号 | イギリス人ボランティア |
| 11号 | (削除) |
| 12号 | サマージョブ(短期インターンシップ) |
| 13号 | (削除) |
| 14号 | (削除) |
| 15号 | 国際文化交流(地方公共団体との事業) |
| 16号~19号 | インドネシア人看護師・介護福祉士候補者及びその家族(EPA) |
| 20号~24号 | フィリピン人看護師・介護福祉士候補者及びその家族(EPA) |
| 25号 | 医療滞在 |
| 26号 | 医療滞在者の同行者 |
| 27号~31号 | ベトナム人看護師・介護福祉士候補者及びその家族(EPA) |
| 32号 | 外国人建設就労者 |
| 33号 | 高度専門職外国人の配偶者の就労活動 |
| 34号 | 高度専門職外国人又はその配偶者の親 |
| 35号 | 外国人造船就労者 |
| 36号 | 高度な研究・教育者、又は関連事業の経営者 |
| 37号 | 高度な情報処理技術者 |
| 38号 | 特定活動36号・37号の者の家族 |
| 39号 | 特定活動36号・37号の者又はその配偶者の親 |
| 40号 | 富裕層向けの観光・保養(ロングステイ) |
| 41号 | 富裕層観光客の同行者(配偶者等) |
| 42号 | 製造業分野における外国人材(経産省認定事業) |
| 43号 | 日系四世 |
| 44号 | 外国人起業家(創業活動) |
| 45号 | 外国人起業家の家族 |
| 46号 | 本邦大学卒業者(留学生の就職支援) |
| 47号 | 特定活動46号の者の家族 |
| 48号 | 東京オリンピック・パラリンピック競技大会等の関係者 |
| 49号 | 特定活動48号の者の家族 |
【主要な特定活動をピックアップ解説】
数多く存在する告示特定活動や告示外特定活動の中から、特に実務上関わることが多い、主要なものを以下に詳しく解説します。
特定活動46号(本邦大学卒業者)
- 概要:日本の4年制大学または大学院を卒業・修了した、非常に高い日本語能力(日本語能力試験N1など)を持つ外国人が対象です。
- 最大の特徴:通常の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)では、大学での専攻と職務内容の関連性が厳しく問われますが、この46号ではその要件が大幅に緩和されます。これにより、大学で学んだ知識を活かしつつ、翻訳・通訳を伴う接客業務(レストラン、ホテルなど)や、工場での製造ラインの管理・指示など、より幅広い業務に従事することが可能になります。まさに、優秀な留学生の活躍の場を広げるための在留資格と言えます。
- 在留期間:5年、3年、1年、6ヶ月、3ヶ月。
就職活動(告示外特定活動)
- 概要:日本の大学や専門学校を卒業した留学生が、在学中から行っていた就職活動を卒業後も継続するための在留資格です。
- 要件:在籍していた学校からの推薦状や、就職活動を継続していることの証明(エントリー履歴など)が必要です。専門学校生の場合は、学んだ内容と就職希望職種との関連性が求められるなど、大学卒よりも要件が厳しくなります。
- 在留期間:6ヶ月。1回のみ更新が可能で、最長1年間、就職活動を続けることができます。
- 就労:原則として認められませんが、資格外活動許可を得れば週28時間以内のアルバイトは可能です。
ワーキング・ホリデー(告示5号)
- 概要:日本と協定を結んでいる国・地域の若者(原則18歳~30歳)が、休暇を主目的として日本に滞在し、その間の旅行・滞在資金を補うための就労を認める制度です。
- 目的:あくまで文化交流や休暇がメインであり、就労が主目的となることは認められません。
- 在留期間:原則1年(国により異なる場合あり)、更新はできません。
- 就労:活動内容に大きな制限はありませんが、風俗営業等での就労は禁止されています。
インターンシップ(告示9号)
- 概要:海外の大学に在学中の学生が、学業の一環として、日本の企業で報酬を受けて実務経験を積むための活動です。
- 要件:大学での専攻とインターンシップの内容に関連性があること、単位認定されるなど学業の一部であることが条件です。
- 在留期間:1年を超えず、かつ大学の修業年限の2分の1を超えない期間。
- 注意点:報酬を伴わない場合は「短期滞在」や「文化活動」など、別の在留資格が該当します。
最重要!就労の可否は「指定書」で確認する
特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際、企業が絶対に行わなければならないのが、**「在留カード」と「指定書」**の2点の確認です。これを怠ると、不法就労助長罪に問われるリスクがあります。
在留カードの確認
まず、在留カードの表面で「在留資格」が「特定活動」であることを確認します。次に、「就労制限の有無」の欄を見ます。ここには通常、**「指定書により指定された就労活動のみ可」**と記載されています。これは、「このカードだけでは何ができるか分からないので、パスポートに添付された指定書を見てください」という意味です。
指定書の確認
次に、本人のパスポートを提示してもらい、ホチキス止めされている**「指定書」**というA4の紙を確認します。ここには、その個人に許可された具体的な活動内容が文章で記載されています。この文章こそが、雇用できるかどうかの法的根拠となります。
【指定書の記載例】
- 就労不可の場合(例:就職活動)
「本邦の公私の機関との契約に基づき…(中略)…就職活動及び当該活動に伴う日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く。)」
→「報酬を受ける活動を除く」と明記されているため、雇用はできません。 - 就労可能な場合(例:ワーキング・ホリデー)
「日本文化及び日本国における一般的な生活様式の理解を深めるために…(中略)…旅行資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける活動」
→「報酬を受ける活動」が認められているため、雇用可能です。 - 条件付きで就労可能な場合(例:特定活動46号)
「本邦の大学を卒業し又は大学院の課程を修了した者が…(中略)…翻訳、通訳その他の…(中略)…知識を必要とする業務に従事する活動」
→ 許可された業務内容が具体的に記載されており、その範囲内でのみ雇用が可能です。
まとめ – 複雑だからこそ専門家への相談を
本記事では、「特定活動」ビザの全体像から、告示されている全活動のリスト、そしてその中でも特に重要な活動内容、雇用における最重要確認ポイントまでを解説しました。
ご覧いただいた通り、「特定活動」は非常に多岐にわたり、個別のケースごとに許可内容が異なる、極めて専門的な在留資格です。許可の基準が非公開であることも多く、安易な自己判断は大きなリスクを伴います。
特定活動ビザを持つ外国人の採用を検討する際は、必ず在留カードと指定書の現物を確認し、少しでも疑問があれば、手続きを進める前に私たちのようなビザ専門の行政書士にご相談ください。
当事務所のサポート
当事務所では、特定活動ビザに関する豊富な経験と専門知識を持つ行政書士が、お客様の状況に合わせて丁寧にサポートいたします。
- 特定活動ビザの取得可能性診断
- 指定書の内容確認と就労可否のアドバイス
- 必要書類の準備サポート
- 出入国在留管理局への申請手続き代行
お客様の状況を丁寧にヒアリングし、ビザ取得や適法な雇用の可能性を最大限に高めるためのサポートをいたします。特定活動ビザに関する不安を抱えている方は、お気軽にご相談ください。



