製造業で外国人を雇用する場合の在留資格

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製造業で外国人を雇用する場合の在留資格

はじめに

アイ・ビー飛鳥行政書士法人です。

深刻化する労働人口の減少を背景に、日本の製造業は今、大きな転換期を迎えています。国内での人材確保が年々困難になる中、企業の持続的な成長を支える鍵として、外国人材の雇用に大きな期待が寄せられています。

しかし、その一方で、

「製造業の現場で働いてもらうには、どのビザが必要なんだろう?」

「『技術・人文知識・国際業務』ビザで、工場のライン作業はさせられるのか?」

「うちは中小企業だが、外国人を受け入れるための条件は厳しいのだろうか?」

といった切実な疑問や不安の声を数多くお聞きします。

外国人材の雇用は、日本人を雇用する場合とは異なり、「在留資格(ビザ)」という法律上のルールを正しく理解することが不可欠です。この理解を怠ると、意図せず「不法就労助長罪」という重大な法律違反を犯してしまい、経営に深刻なダメージを与えるリスクすらあります。

この記事では、ビザ申請を専門とする行政書士として、製造業で外国人材を雇用する際に検討すべき全ての在留資格について、その活動範囲、要件、メリット・デメリットを網羅的に解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、貴社に最適な人材を採用するための明確な道筋が見えるはずです。

【全体像】製造業で雇用可能な在留資格 比較一覧

まず、製造業で外国人を雇用する際に選択肢となる代表的な在留資格を一覧表で比較してみましょう。それぞれの資格で「できること」と「できないこと」が明確に定められている点を把握することが第一歩です。

在留資格の種類 主な対象業務 単純作業の可否 在留期間の上限 主な要件例
技術・人文知識・国際業務 設計、開発、生産管理、品質管理、営業、経理、通訳・翻訳など 不可 制限なし 大卒以上の学歴 or 10年以上の実務経験
特定活動46号 日本語能力を活かす幅広い業務(現場での指示・管理業務など) 一部可 制限なし 日本の大学・大学院卒 + 日本語能力N1レベル
特定技能 素形材・産業機械・電気電子情報関連産業等の現場作業 1号:最長5年 / 2号:制限なし 技能試験・日本語試験の合格 or 技能実習修了
技能実習(育成就労) 技能移転を目的とした現場作業 3年〜5年(育成就労は3年) 技能移転という目的、受入企業の体制
企業内転勤 海外拠点からの転勤者(技術・人文知識・国際業務に準ずる) 不可 制限なし 海外拠点で1年以上の勤務経験
身分系資格(永住者など) 制限なし(日本人と同様) 制限なし なし
資格外活動(留学生など) 制限なし(アルバイト) 週28時間以内 在留資格に応じた本業があること

【専門職・大卒人材向け】在留資格の詳細解説

主に大学卒業者などを対象とし、専門的・技術的な知識を活かした、いわゆる「ホワイトカラー」業務に従事するための在留資格です。

技術・人文知識・国際業務

最も代表的な就労ビザです。理系・文系問わず、専門知識を活かした職務が対象となります。

  • 従事できる業務例:
    • 技術: 製品の設計・開発、CADオペレーター、生産管理、品質管理、研究開発、技術指導
    • 人文知識: 企画、営業、マーケティング、経理、総務、人事
    • 国際業務: 海外営業、貿易事務、通訳、翻訳、語学指導
  • 重要なポイント:
    この在留資格の根幹は「単純作業に従事できない」という点です。例えば、生産管理の担当者として採用した外国人が、業務時間のほとんどを工場の組立ラインでの作業に費やすことは認められません。研修目的で一時的に現場作業を経験することは可能ですが、それが主たる業務となってはなりません。
  • 主な要件:
    • 関連する分野を専攻して大学・大学院を卒業していること、または日本の専門学校を卒業し「専門士」を取得していること。
    • 上記学歴がない場合、関連業務について10年以上(国際業務は3年以上)の実務経験があること。
    • 日本人と同等額以上の報酬を受けること。

特定活動46号(本邦大学卒業者)

優秀な留学生の日本での活躍の場を広げるために創設された比較的新しい在留資格です。

  • 従事できる業務例:
    「技術・人文知識・国際業務」の業務に加え、「日本語での円滑な意思疎通を要する」ことを前提に、より幅広い業務が可能です。製造業においては、「外国人技能実習生などへの指示・管理を行いながら、自らもライン作業に参加する」といった働き方が認められるのが最大の特徴です。
  • 重要なポイント:
    あくまで高い日本語能力を活かすことが前提です。誰とも話さず、黙々と行う単純作業は対象外です。また、「技術・人文知識・国際業務」の要件である「大学での専攻と業務内容の関連性」が大幅に緩和されるため、より柔軟な人材配置が可能になります。
  • 主な要件:
    • 日本の4年制大学を卒業、または大学院を修了していること。
    • 日本語能力試験N1、またはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上など、極めて高い日本語能力を有すること。

企業内転勤

海外の親会社や子会社など、関連企業から日本の事業所に転勤する従業員のための在留資格です。

  • 従事できる業務例:
    「技術・人文知識・国際業務」で認められている業務と同様です。単純作業はできません。
  • 主な要件:
    • 申請前の直近1年以上の期間、海外の事業所で「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事していること。
    • 日本人と同等額以上の報酬を受けること。

高度専門職

学歴、職歴、年収、年齢などをポイントに換算し、合計が70点以上に達するハイスペックな人材に与えられる優遇された在留資格です。

  • 従事できる業務例:
    最先端技術の研究開発者や、複数の事業を統括するマネージャーなど、高度な専門性を要する業務が対象です。
  • メリット:
    • 在留期間が最初から「5年」付与される。
    • 永住権申請までの期間が大幅に短縮される(通常10年→最短1年)。
    • 配偶者の就労や親の帯同に関する要件が緩和される。

【現場作業・技能職向け】在留資格の詳細解説

製造現場の担い手として、ライン作業や機械操作などの技能的な業務に従事するための在留資格です。

特定技能

人手不足が深刻な特定産業分野において、即戦力となる外国人材を受け入れるために創設された制度です。製造業は「素形材・産業機械・電気電子情報関連産業」の3分野が対象となります。

  • 従事できる業務例:
    鋳造、鍛造、機械加工、金属プレス加工、溶接、塗装、電気機器組立てなど、各分野で定められた技能を要する業務。関連する付随業務(原料の運搬、清掃など)も可能です。
  • 重要なポイント:
    • 特定技能1号: 最長5年間就労可能。家族の帯同は不可。
    • 特定技能2号: 1号を修了し、より高度な試験に合格すると移行可能。在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族の帯同も可能になります。事実上、永住への道が開かれます。
  • 主な要件(外国人側):
    • 「技能実習2号」を良好に修了していること。
    • または、分野ごとの「技能評価試験」と「日本語能力試験(N4レベル)」に合格していること。
  • 主な要件(企業側):
    • 外国人材への支援計画を作成し、適切に実施すること(登録支援機関への委託も可能)。
    • 日本人と同等額以上の報酬を支払うこと。
    • 各種法令を遵守していること。

技能実習(育成就労)

日本の技術や知識を開発途上国へ移転し、その国の経済発展を担う「人づくり」に貢献することを目的とした国際貢献制度です。

  • 従事できる業務:
    対象となる職種・作業が定められており、その範囲内での実習(就労)が可能です。
  • 重要なポイント(制度変更):
    技能実習制度は、本来の目的と実態の乖離などの問題点が指摘され、2024年に廃止が決定し、新たに「育成就労」制度が創設されることになりました。

    • 育成就労制度の骨子:
      • 人材育成と人材確保の両方を目的とすることを明確化。
      • 特定技能制度への円滑な移行を促す。
      • 本人の意向による転籍(転職)が一定の条件下で可能になる。
        この制度変更は、今後の外国人雇用戦略に大きな影響を与えるため、最新の情報を注視する必要があります。

技能

産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事するための在留資格です。

  • 従事できる業務例:
    外国料理の調理師、スポーツ指導者、パイロット、貴金属等の加工職人など。
  • 製造業での適用:
    一般的な製造業の業務でこの在留資格が適用されるケースは稀ですが、例えば外国特有の製品の製造や、極めて高度な熟練を要する特殊な機械の修理・メンテナンスなどの分野で可能性があり得ます。10年以上の実務経験(一部例外あり)が求められるなど、ハードルは高いです。

【就労制限のない・時間制限あり】の在留資格

特定の業務内容に縛られず、より柔軟な雇用が可能なケースです。

身分系の在留資格(永住者、定住者など)

「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つの在留資格を持つ外国人は、活動に制限がありません。

  • 特徴:
    日本人と全く同じように、職種や業務内容の制限なく雇用できます。単純作業はもちろん、どのような仕事にも従事可能です。採用手続きも日本人と同様に進めることができます。

資格外活動許可(留学生アルバイトなど)

「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ外国人は、事前に入国管理局で「資格外活動許可」を取得することで、アルバイトとして就労できます。

  • 特徴:
    • 就労時間は原則週28時間以内という厳格な制限があります(留学生は夏休みなどの長期休暇中は週40時間まで可能)。
    • 複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、その合計時間が制限内である必要があります。
    • 業務内容に制限はありませんが、風俗営業等の一部業種は禁止されています。

【最重要】採用前に必ず確認すべき3つのチェックポイント

思わぬ法律違反を防ぎ、安定した雇用を実現するために、採用選考時には以下の3点を必ず確認してください。

  1. 在留カードの現物確認
    • 氏名、在留資格、在留期間の満了日、そして「就労制限の有無」の欄を必ず確認します。
    • 「就労不可」とあれば雇用できません。「在留資格に基づく就労活動のみ可」「指定書により指定された就労活動のみ可」と記載されている場合は、その資格で許可された範囲の業務しかできません。
  2. (必要な場合)パスポートに添付された「指定書」の確認
    • 在留資格が「特定活動」の場合、在留カードだけでは許可されている活動内容が分かりません。必ずパスポートに添付された「指定書」という書類で、具体的な活動内容や就労の可否を確認する必要があります。これを怠ることは非常に危険です。
  3. 担当させたい業務と在留資格のマッチング
    • 本人に「どの業務に従事させたいか」を明確にし、それが本人の持つ(あるいはこれから取得する)在留資格で許可されている活動範囲と一致するかを慎重に判断します。特に「技術・人文知識・国際業務」で現場作業をさせたい、という安易な考えは不法就労に直結します。

まとめ – 複雑な制度だからこそ、専門家の活用を

本記事では、製造業で外国人材を雇用する際に考慮すべき在留資格の全体像と、それぞれの特徴、注意点について解説しました。

ご覧いただいた通り、外国人雇用には複数の選択肢がありますが、それぞれに厳格なルールが定められています。また、入管法は社会情勢に応じて頻繁に改正されるため、常に最新かつ正確な知識を持つことが求められます。

安易な自己判断は、不許可による採用計画の頓挫や、不法就労助長罪といった重大なコンプライアンス違反のリスクを伴います。

外国人材という大きな可能性を、リスクではなく確実な成長の力とするために、少しでも疑問や不安を感じた場合は、採用活動を本格化させる前に、ぜひ一度、私たちのようなビザ申請の専門家にご相談ください。

当事務所のサポート

当事務所では、製造業における外国人雇用に関して、豊富な経験と専門知識を持つ行政書士が、貴社の状況に合わせた最適なソリューションを提案いたします。

  • 最適な在留資格のコンサルティング
  • 在留資格取得の可能性診断
  • 複雑な申請書類の作成サポート及び代行
  • 事業計画書など、追加書類の作成支援
  • 出入国在留管理局との折衝・申請代行
  • 雇用後のコンプライアンスに関するアドバイス

初回のご相談は無料です。貴社の未来を支える優秀な人材確保の一歩を、私たちが全力でサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

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